インフルエンザと口腔ケアの関係
2018年12月19日
こんにちは!
歯科衛生士の澤田です(^-^)
気温が下がり空気が乾燥してきて、インフルエンザの流行する季節がやってきました。
いったん流行すると急速に感染が広がることから、インフルエンザ感染者は例年推定1000万人といわれています。
今年も予防接種を計画していらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
現在、インフルエンザの予防としては、
①十分な睡眠、無理をしない(免疫力の向上)
②人の多いところにいかない(感染の機会を減らす)
③うがい、手洗いの励行(ウイルスを体の中に持ち込まない)
④感染の機会が高い場所でのマスクの着用
などがいわれています。
近頃はこれらに加え口腔のケアも予防に大きな役割を果たすと言われるようになりました。
なぜ、口腔内が清潔になると、インフルエンザ予防になるのでしょうか?
専門的な口腔ケアができていると、口腔内の細菌の数が1桁程度減ることがわかっています。
また、口腔内が清潔になることで、唾液が粘膜を潤し感染予防にもなります。
インフルエンザの場合は、どのように口腔内の細菌の影響を受けているのでしょうか?
インフルエンザウイルスの感染と増殖のしくみを大雑把にみてみると…
インフルエンザウイルスには、その表面に、ヘマグルチニン(赤血球凝集素)とノイラミニダーゼという糖タンパクの突起が出ています。
★ヘマグルチニン★
この突起が、人の細胞の表面にあるシアル酸の糖鎖の部分にくっつくことで、ウイルスが人の細胞に感染することができる。
ヘマグルチニンの構造が、病原性の強弱を決めているとされます。
★ノイラミニダーゼ★
ウイルスが人の細胞内に取り込まれ増殖した後、次の細胞に感染するためシアル酸との結合を断ち切るという役割を持っています。
インフルエンザワクチンは、ヘマグルチニンに特異的に結合するために、人の細胞に結合できなくなることで、感染を予防するものです。
タミフルなどの抗インフルエンザ薬は、ノイラミニダーゼの活性を阻害することで、インフルエンザワクチンが細胞を渡り歩けなくします。
ヘマグルチニンは、実は、細菌の出すプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)によって、あらかじめ2股に割れることで、(開裂)、細胞膜をこじ開けます。
そのことにより、インフルエンザウイルスが細胞の中に侵入する事ができます。
このように口腔内や呼吸器に常在しているブドウ球菌など放出するプロテアーゼの存在が、このヘマグルチニンの開裂にかかわっています。
当然、専門的な口腔ケアが行われていると、1桁ぐらいは細菌の数が減りますので、清潔な口腔内であればあるほど細菌から出されるプロテアーゼの量が減り、ヘマグルチニンの開裂が起こりにくくなりインフルエンザの感染予防になるとされています。
ちなみに、弱毒性のインフルエンザは、ヘマグルチニンの構造が、口腔、呼吸器などの細菌由来のプロテアーゼなどだけで開裂が起こるもので、局所的な感染ですむことが多いようです。
強毒性のものは、全身に存在するいくつかのプロテアーゼでヘマグルチニンの開裂が起こるため、感染力が全身に広がりやすく致死率が高くなります。
★歯周病菌はインフルエンザ感染を重症化させます★
歯周病菌はインフルエンザウイルスを粘膜に侵入しやすくする酵素(プロテアーゼやノイラミニダーゼ)を出します。
また、歯周病菌由来の酵素は抗ウイルス薬で抑制できないため、口腔内を不潔にしておくとインフルエンザ感染を助長します。
特に免疫力の弱い高齢者は、インフルエンザが重症化する可能性があります。
今年はインフルエンザの新たな予防法として口腔ケアについても実践してみてはいかがでしょうか(^ー^)