高齢者と食
2015年11月16日
こんにちは。歯科医師の丸野です。今回は高齢者と食をテーマに記事を書かせていただきます。
現在日本では高齢化が進んでおりますが、「高齢者における日常生活における関心事」(1998年 福祉施設及び老人病院等における住民利用者の意識実態調査分析結果より)では、1位が「食べること」であり、次に「家族との会話」などが続きます。
これらの食事や会話は、いずれも口腔機能が正常に働くことで楽しむことができます。口腔機能低下の原因としまして、主には口腔疾患によるものや加齢、脳血管障害によるもの、認知症に伴う機能低下によるものなどが挙げられます。口腔機能の低下により、咀嚼や嚥下機能の低下を来し、高齢者の楽しみやQOLの低下を招くだけでなく、誤嚥性肺炎発症や栄養不良や脱水、さらに感染症や褥瘡などの合併症が発症します。
以上のように、口腔機能が低下して食べることが困難とならないよう、歯科医師も含め地域連携で以って高齢者を支援し、困難が生じた場合は必要な対応をしていくことが重要でだと考えます。
歯医者さんにかかるときのお願い★
2015年11月9日
こんにちは、藤林です。
今回はお口に入っていたものが壊れたりとれたりしてしまい、歯医者さんにかかるときのお願いについて書かせて頂きたいと思います。
★つめものやかぶせものが外れたとき
元に戻るかどうか確認させて頂きますので、飲み込んでしまったときや粉々になってしまった以外はとれてしまったものを持ってきて頂くようにお願いいたします。
★入れ歯やマウスピースが壊れてしまったとき
こちらも同じく、元に戻るかを確認させて頂きますので、壊れたものを持ってきて頂くようにお願いいたします。直接お口の中で修理することもありますので、本人が受診して頂くようにお願いいたします。
★転倒してしまったとき
頭を打ったときなどは大きな病院を受診してください。落ち着きましたら、なるべく早く歯科に来て頂けるようお願いいたします。
歯がかけたり、歯ごと抜けてしまった場合も、なるべく元に戻しますので、持ってきて下さい。歯が抜けた場合、抜けた歯の保存方法が、予後に関わってきます。もし歯が見当たらなければ探して頂いて、牛乳に浸けて持ってきて頂くのがベストです。または歯の保存液で、何もなければ、唇(頬)と歯が並んでいるところの隙間に歯を含んで持ってきて下さい。歯の保存液は学校の保健室で導入されるところが多くなってきています。
子供の睡眠時無呼吸症候群
2015年11月5日
こんにちは。院長の市来です。
子供の睡眠時無呼吸症候群
通常、子供はいびきをかきません。もしも子供が日常的にいびきをかいていているようでしたら、何らかの原因で気道が狭くなっており、治療が必要となってきます。
特に日中に眠気があったり、落ち着きがなかったり、集中力がない場合は、いびきよって睡眠不足に陥っている可能性があります。
子供の睡眠時無呼吸症候群の発症頻度は1~3%と報告されています。成人では男性が多いのに対し、子供では男女差はなく、肥満の関与も少ない傾向がみられます。また、6歳まで子供は季節変動があり、風邪や鼻がつまりやすい2~4月は受診者が多く、8月は受診者が少ないという報告もあります。
子供の睡眠時無呼吸症候群の原因としては咽頭扁桃肥大(アデノイド)、口蓋扁桃(扁桃腺)肥大によるものがほとんどです。アデノイド、口蓋扁桃肥大により気道が狭くなり、いびきをかき、睡眠時無呼吸症候群を引きおこします。鼻づまりも症状を悪化させます。その他では、悪い歯並び、肥満、大きな舌も気道を狭め、睡眠時無呼吸症候群を発症させる一因となります。
子供の睡眠時無呼吸症候群の症状は大人と同様に睡眠時に無呼吸や低呼吸が何度も訪れるため、脳が何度も目覚めてしまい、質の低い睡眠となり、集中力低下、落着かない、学習能力の低下などが認められるようになります。
また、睡眠が深くなったときに分泌される成長ホルモンが分泌低下し、成長が遅れてしまいます。
子供の睡眠時無呼吸症候群と歯並びの関係
下あごの後退、下あごが小さい(小下顎症)、かみ合わせが深い(過蓋咬合)症状がみられると、口の中の容積が小さくなり、舌は後ろ(喉の方向)に押しこまれやすくなります。その結果、気道は狭まり、睡眠時無呼吸症候群を発症する要因となります。
また、出っ歯や前歯に隙間がある(開咬)症状がみられると、口は閉じにくくなります。口を開けたまま寝てしまうと、重力の作用で下あごは後退し、舌は後ろ(喉の方向)に押し出されやすくなり、睡眠時無呼吸症候群を発症する要因となります。
子供が睡眠時無呼吸症候群を発症すると、5~25%に発育障害がおきるとされています。また、下あごの発育障害により睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させるという悪循環がおきることがあります。
子供の睡眠時無呼吸症候群の治療法
子供の睡眠時無呼吸症候群の治療は、主にアデノイド切除、扁桃摘出による手術をおこないます。症状に応じて、鼻にマスクをつける方法(CPAP)、矯正治療、減量等の治療もおこなわれます。
1.アデノイド・扁桃摘出術
咽頭扁桃肥大(アデノイド)、口蓋扁桃(扁桃腺)肥大は、4~8歳をピークとして自然に症状が改善するケースがみられます。ただし、いびきの程度がひどい場合などは、アデノイド・扁桃摘出術の対象となります。
合併症のないときでのアデノイド・扁桃摘出術による改善率は、80~85%とされています。4~6歳での手術が最も多く、7~9歳での改善率は60~70%、肥満を合併しているときの改善率は25~40%とされています。
年齢が上がるにつれて改善率が低下するのは、顔面形態の変化、肥満が原因と考えられます。
2.CPAP(持続的陽圧呼吸装置)
通常大人が使用しますが、まれに子供にも使用されることもあります。鼻にマスクを装着して加圧した空気を気道に送り込むことにより、気道の閉塞を防ぎます。慣れるまでに時間がかかることもありますが、家庭でも簡単に使用でき、効果の高い方法です。
3.矯正治療
下あごが小さい(小下顎)など、あごや歯並びに問題のある場合は、子供の時期に矯正治療をおこないます。主に取り外しできる床矯正装置をもちいてあごを拡げて口の中のスペースを大きくします。あごを大きくするのは、成長の止まった大人では難しく、成長期の子供、主に5~11歳頃の子供が対象となります。子供の時期の矯正治療は、大人になってからの睡眠時無呼吸症候群の発症予防にもつながります。
4.口呼吸の改善
現代は軟らかい食べ物が増え食生活に変化が起こった結果、かむ回数が昔に比べると少なくなりました。食事で噛まないとあごの発育を悪くなり、口呼吸を促すため、睡眠時無呼吸症候群の発症要因となります。
子供の頃からかむ回数が増えるように食事を工夫して、鼻呼吸を促していきます。また、必要に応じて、パタカラ、あいうべ体操などの筋肉の機能訓練をおこないます。
5.鼻づまりの治療
鼻づまりによって、口呼吸になり睡眠中の無呼吸や低呼吸が増加することがあることがあります。鼻づまりを改善するために、抗アレルギー剤、抗ロイコトリエン剤、粘液調節剤、点鼻ステロイド剤などが睡眠時無呼吸症候群の治療に使用されます。
1~3ヶ月間の使用で、睡眠時無呼吸症候群の症状が改善されることがあります。アデノイド・扁桃摘出術は、鼻づまりの治療で睡眠時無呼吸症候群の症状が改善しないときにおこなわれます。
6.その他
カロリー制限や運動療法による体重減少、睡眠環境の改善、睡眠時の体位の工夫などによって改善することもあります。
子供のいびきや睡眠時無呼吸症候群の原因は、アデノイドと口蓋扁桃肥大が多いため、これらが原因として考えられるのであれば、耳鼻咽喉科や小児科での治療となります。歯並びや口呼吸が原因であれば、歯科や耳鼻咽喉科での治療となります。