酸蝕症について
2016年01月25日
こんにちは。
歯科医師の新井です。
今回は酸蝕症についてお話させていただきます。
柑橘類や梅干を食べる、ビタミンCの多い飲み物を飲む、ワインを飲むなどしたときに歯がきしむような経験をされたことはないでしょうか。そのようなときは一時的に飲食物に含まれる酸によりエナメル質が溶けてしまうからです。しかししばらくすると、そのきしむ感じはなくなります。それは唾液の力によって再石灰化が起こりもとどおりに修復されるからです。
しかし、長時間だらだら食べたり、摂取する頻度が多いと、唾液によって再石灰化される前にどんどん歯が溶けていくことがあります。これが酸蝕症といわれるものです。虫歯菌により歯が溶けるのではなく、飲食物の酸によって歯が溶けていくことになります。歯が溶けると、虫歯と同じように、歯がしみたり、噛んだときに痛いという症状がでることになります。
また、中には摂食障害などで嘔吐する癖がある方も、自身の胃酸で歯が溶けていくことがあります。
酸蝕症の予防法としては、酸性飲食物をだらだら食べたり飲んだりしない。
とくに寝る前に酸性飲食物を食べたり飲んだりしない。
就寝中は唾液分泌が少ないので歯の再石灰化が起こりにくいです。また、酸性飲食物をとった後はよくうがいをする。他には、酸性の飲食物を摂食したあとはすぐにブラッシングをしない。
酸性飲食物を多量に取るとエナメル質が柔らかくなっているので、すぐブラッシングすると歯が余計に削れます。
虫歯はなくても歯がしみる感じがする方は、日々の食生活を見直してみてはいかがでしょうか。
うがい薬(洗口剤)について★
2016年01月18日
こんにちは!藤林です。
たくさんのうがい薬(洗口剤)が市販されていますね。お使いの方も多いとは思います。今日は洗口剤の効果についてかかせて頂きます。
虫歯や歯周病の原因となる歯垢(プラーク)は、多数の種類の細菌が集団となったものです。しばらく歯をみがいていないと、歯がヌルヌルしてきますね。なぜヌルヌルしているのでしょうか?
しばらく歯を磨かないと、細菌も口の中で生き抜くために、歯垢の中の細菌は丈夫なバリアを作りだします。こうなるとちょっとやそっとの刺激じゃ取り除きにくくなります。これはバイオフィルムといいます。
このバイオフィルム、どこかで似たものをみかけませんか?
台所の排水溝のヌメりと一緒です!
排水溝のヌメりは 強圧の水をかけたところで綺麗になるでしょうか?
多少は綺麗になるかもしれませんが、頑固にこびりついていて、ほとんどとれないかと思います。
それを取り除くにはタワシなどのブラシで擦ると綺麗になりますよね!
お口の中も一緒です。歯垢やバイオフィルムをやっつけるには、歯ブラシや糸ようじなどの機械的清掃が一番です!!
では洗口剤の効果はなんでしょうか?洗口剤には歯垢の形成を抑制するような有効成分が含まれていますので、その機械的清掃が行き届いたところに、有効作用を発揮してくれます。
ですから、メインに歯垢を除去してくれるものではなく、あくまで補助的なものでしかないのですね。
歯ぎしり用マウスピースの効果
2016年01月12日
歯ぎしり用マウスピースを歯科で勧められている方も多いのではないでしょうか。
歯ぎしり用マウスピースは寝ている間に歯ぎしりをすることによる歯へのダメージを減らすためのマウスピースです。
しかし、それだけではなく多くの効果があるのです。例えば知覚過敏の症状が軽くなったり、歯がかけたり、詰め物などが取れやすい人にも効果があります。
今回は歯ぎしり用マウスピースについて説明します。
A.歯ぎしりとは
無意識のうちに上下の歯が当たり、歯自体に強い力がかかることです。歯ぎしりは横に歯を動かすグライディング、歯をくいしばるクレンチング、歯をカチカチ合わせるタッピングがあります。
音が出やすいグラインディングなどは自分や家族が気づきやすいですが、音が出ないクレンチングは自覚症状がほとんどない場合が多いです。
意識がある時、食事の時間も含めて上下の歯が接触する時間は1日20分程度と言われています。
また、歯に過度の負担がかからないようにするための反射があるため強い力で噛みこむことは意識してやらなければできません。
しかし、無意識の時、特に寝ている時には反射が働かないため、歯ぎしりで強い力が過度に歯や顎に加わるため、自分の歯が壊れていきます。
B.歯ぎしり用マウスピースの効果
1.歯がしみる(知覚過敏)に効果的
歯がしみる知覚過敏の原因は、歯ぎしりにより歯の根元の表面の結晶構造が壊れ楔(くさび)型にえぐれてしまうことや歯が揺さぶられて神経が過敏になってしまうことです。
マウスピースを使うことによって歯にかかる力を分散し、歯のえぐれや揺さぶりを防ぎ知覚過敏を改善する効果があります。
2.噛んだ時の痛み(歯根膜炎)に効果的
歯ぎしりによって歯が揺さぶられると、噛んだ時に痛みを感じることがあります。これは歯の根の周りにある歯根膜(しこんまく)が炎症を起こしてしまう歯根膜炎が原因です。
マウスピースによって歯根膜を安静にして、噛んだ時の痛みを少なくしていく効果があります。
3.顎の痛み(顎関節症)に効果的
顎の関節は、頭の骨と顎の骨の間に関節円板(かんせつえんばん)という軟骨でできたクッションがあります。
歯ぎしりが強いと関節円板がダメージを受け、顎が痛くなります。マウスピースを使うことによって顎の関節に加わる力を和らげ、顎の痛みを軽減する効果があります。
4.歯のすり減り(咬耗)に効果的
歯ぎしりは上下の歯をすり合わせることによって、歯が磨り減り(咬耗)が起こり、エナメル質がなくなってしまい象牙質というところが露出してきます。
象牙質は感覚がある組織なのでこの状態でしみてこられる方もいらっしゃいます。この状態が進んでしまうと場合によっては歯の神経が出てきてしまうことがあるのです。
マウスピースを使うことによって、歯を咬耗から守ることができます。
5.セラミックの破折に効果的
歯ぎしりが強い人は、セラミック治療の後に欠けたり割れたりしてしまうことがあります。
セラミック治療は体にとってはアレルギーもなく審美的でとてもとても良い治療ですが、歯ぎしりのような強い力が長時間かかり続けると欠けたり、割れたりすることがあります。
マウスピースを使うことによってセラミックやセラミック治療をした歯を守る効果があります。
6.歯が割れることの防止に効果的
治療した歯でも虫歯でもないのに急に歯が痛くなったり、歯茎が腫れたりすると歯が割れてしまった可能性があります。
歯ぎしりが強い方で歯に強い力が集中してしまうと歯が割れてしまうことがあります。マウスピースは歯ぎしりで歯に加わる力を分散し、歯が割れるのを防ぐ効果があります。
7.歯が揺れることの改善に効果的
歯ぎしりによって歯に力が加わると歯が揺さぶられ揺れてきやすくなります。
また、歯と歯を支えている骨の間に隙間ができます。その隙間に歯周病菌が感染すると歯周病が急激に進行します。
マウスピースは歯茎に加わる力を分散して、歯周病の悪化を防ぐ効果があります。
C.歯ぎしり用マウスピースの作製法と使い方
1.歯医者で歯型を取る
歯医者で上顎と下顎の型を取ります。虫歯や歯周病が進行している場合は先にその治療をします。
虫歯などの治療前だと、治療後にマウスピースが合わなくなる場合があります。当院では通常上あごに装置をつけますが、医院によっては下の歯に合わせたマウスピースを作ることもあります。
2.約1週間後マウスピースが出来上がる
出来上がったマウスピースを口の中に合わせます。はじめは入れている違和感や歯が押されるように感じる可能性があります。
入れていることに慣れるのに少し時間がかかる方もおられます。違和感が強い方は医院で調整してもらってください。
3.基本的に夜寝ている間使用する
日中は自分で噛みしめないように意識してください。無意識下の夜間にマウスピースは使用します。
日中も集中して自分で食いしばりしていることを感じる方は日中も使用してください。また、マウスピースを使用する前は必ず、歯を丁寧に磨いて細菌を減らしてください。
4.朝起きたらマウスピースを外す
朝起きたらマウスピースを外してください。外した後は1時間程度歯が浮くような感じがすることがありますが、徐々に治ってきます。
外している間はマウスピースを必ずケースに入れ、なくさないようにしてください。
5.歯ブラシで水洗する
マウスピース使用後は水洗して歯ブラシで磨いてください。研磨剤が含まれている歯磨き粉で磨いてしまうとマウスピースに傷がつき、汚れや変色の原因になります。
必要があれば入れ歯洗浄剤やマウスピース用の洗浄剤を使用してください。
D.歯医者で作るマウスピースの値段
保険診療3割負担の方は5千円程度
保険診療内で歯ぎしり用マウスピースを作ると、3割負担の方で5千円程度の値段です。
その他に初再診料や検査料、型取りの費用、調整料などがかかります。また、半年間は新たなマウスピースを作ることはできません。
E.市販のマウスピースの危険性
市販のマウスピースは既成のマウスピースを熱湯などで柔らかくして、自分の歯型に合わせ固めるものです。
マウスピースがしっかり歯型に合っていないと歯並びが悪くなってしまう場合があります。
歯が動いてしまい歯並びや噛み合わせが悪くなってしまうと、元の状態に戻すのは難しくなってしまいます。できるだけ市販のマウスピースは使わないようにしてください。
まとめ
以外と知られていないのが知覚過敏の原因が歯ぎしりであることです。私どもの医院のスタッフもマウスピースをいれることで歯がしみるのが治まっています。
マウスピースは歯も削らず、後戻りのできる効果がある治療法です。
特に歯に原因が見当たらず痛みがある場合、すぐに削るのではなくマウスピースで噛み合わせの問題がないか調べることが大切になります。
また、睡眠時無呼吸症候群用のマウスピースなどいろいろな種類のものがありますので是非ご相談ください。
薬について
2016年01月5日
こんにちは、藤林です。
初めて歯科医院にこられるとき、あるいはお久しぶりにこられるときには、お身体のことも聞かせていただきます。
具体的には、持病について・治療中かどうか・飲んでおられる薬についてなどについてです。
なぜかというと、病気によっては、抜歯などの外科処置を避けた方が良い場合や、持病の治療にとって大切な薬でも、歯科治療の際には副作用が出る場合があるからです。安全な治療をご提供したいと思っておりますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
薬を飲んでおられる方には、お薬手帳を見せてくださるようお願いいたしております。
なお、治療の際には自己判断で薬を減らしたりしないようにお願いいたします。
安全に治療が受けられるかどうか、普段のかかりつけの医科にお手紙をかかせていただいたり、検査をお願いする場合もあります。
ときどき歯科医院から医科を受診して、お身体の病気が見つかることもあります。
教えていただきたい病気のひとつに、骨粗鬆症があります。骨粗鬆症治療ではビスホスホネート製剤(BP製剤)と呼ばれる薬が第一選択になっています。ところが、抜歯などの外科処置のキズが発端となり、あごの骨が細菌に感染してしまい、壊死(えし)してしまうことがあります。
また、がんの転移防止のお薬としてもこのBP製剤が使われることがあります。
投与方法としては経口剤と注射剤があります。しかし注射剤となるとビスホスホネートを使っていることに気づかれていない方もおられますので、しっかり把握して申告してくださるようにお願いいたします。