歯の痛みの原因
2017年02月20日
こんにちは。
歯科医師の新井です。
歯の痛みと言えば、虫歯と思われがちですが、虫歯でもないのに、突然「キーン」と痛む事はありませんか?
これは、冷たい物や歯ブラシの毛先が歯に当たる事によって起きる知覚過敏です。
知覚過敏は、3人に1人が悩んでいるといわれている歯の痛みなのです。一時的な痛みであるため、放置されることも多い知覚過敏ですが、実はそのままにしておくと、深刻なケースに至る場合もあります。
こちらでは、そんな知覚過敏の原因と対処法について、まとめてみましたので、ぜひご覧下さい。
知覚過敏のメカニズムと症状
冷たいものや温かいもの、酸味の強いものなどを飲食した際、歯の表面に「キーン!」と歯がしみて一時的な痛みを伴います。虫歯と違い、「ズキンズキン」と拍動するような痛みでなく一時的な痛みなのが特徴です。しばらくすれば痛みが治まるので、知覚過敏はしばしば軽視されがちです。
知覚過敏は、何らかの原因により、歯の表面を覆っている「エナメル質」が傷つき、内層の「象牙質」が露出することで、外部から刺激を受けます。
または、通常歯茎で隠れた部分「歯根部」が露出することで、セメント質が露出し刺激を受けることもあります。象牙質やセメント質は「象牙細管」を通じて、内部に通っている「歯髄神経」を刺激します。歯髄神経から脳に伝達し、「キーン!」と痛みを感じるのです。
知覚過敏を放置すると「歯髄炎」という神経の病気を発症する場合あります。安易に放置せず、知覚過敏の症状がある場合は、早めに歯科医院に相談しましょう。
虫歯とは違う!知覚過敏をチェックする
知覚過敏の痛みは、一時的な痛みで、虫歯の痛みと異なりますが、その違いを把握していなければなりません。知覚過敏か虫歯の痛みなのかを確認してみて下さい。
どのような時に痛むのか?
冷たい物を飲んだ時や、風が歯にあたった時だけいたくなる。虫歯の場合は、慢性的な痛みで、徐々に痛みが増します。
痛みの長さは?
知覚過敏は短時間で収まりますが、虫歯の痛さは持続します。
痛みの頻度は?
何もしないと、痛さを感じることはありません。このような痛さを感じたら、知覚過敏と疑ってよいでしょう。
知覚過敏が起こる原因
突然痛みを発症してしまう知覚過敏。
その原因は、歯の表面にあるエナメル質が、様々な要因によって傷つき、減少してしまいエナメル質の下にある象牙質がむき出しになってしまう事によって発生します。
しかし、エナメル質がむき出しになってしまったからといっても、必ずしも知覚過敏になるわけではありません。
知覚過敏を起こすのは、神経が敏感な歯肉に近いエナメル質の部分が多く、また歯肉が下がった時に起こりやすいのです。
一例を挙げますと、以下のようなものがあります。
虫歯が原因でエナメル質が削れ、象牙質に刺激が伝わりしみてしまう。
歯周病治療のため、歯の根っこまで付着した歯石を除去した場合に露出したセメント質に刺激が伝わる。
打撲等により、歯が物理的にひび割れてしまった場合。
しかし中には虫歯も歯周病も無く、きちんと歯磨きしていても知覚過敏になる人もいます。実は知覚過敏はご自身の生活習慣に原因がある場合も少なくないのです。
知覚過敏の原因を突き止めよう
エナメル質が傷つき減少されることによる知覚過敏。では、どうしてエナメル質は傷ついてしまうのでしょうか?
実は、その原因は、自分自身の生活習慣と関わっているのです。知覚過敏となる要因を上げてみます。
誤ったブラッシング
歯を磨く時の力が強すぎるとエナメル質が傷つき、知覚過敏になってしまいます。虫歯にならないために、ブラッシングは欠かせませんが、必要以上の力で歯を磨くことは控えましょう。
歯ぎしり
不安やストレス、過労により、睡眠中に歯ぎしりをする人がいます。
歯ぎしりによる負荷は、歯周組織全体にかかります。歯と歯が擦れるので、表面のエナメル質を削ってしまうのです。
また、歯並びが悪く、うまく噛みあわない部分では、過大な負荷がかかるために歯茎が縮み、セメント質が露出することがあります。
食べ物による原因
食べ物の好みによっても、知覚過敏になりやすいです。エナメル質は、酸にとても弱い物質なので、酸性の多い食品添加物を多くとっていると、知らない間にエナメル質を溶かしてしまい、知覚過敏になる可能性が出てきます。
歯みがき粉による原因
歯みがき粉の付ける量が多くてもエナメル質を傷つけてしまいます。特に、研磨剤の入っている歯みがき粉をたっぷりつけている方は、要注意です。歯みがき粉は、量を多くつければいいというものではありませんので、量が多い方は減らして使いましょう。
「酸」による破壊
酸の強い飲み物を常飲しているようなことはありませんか?
人体組織の中で最も硬いとされるエナメル質ですが、実は酸にはとても弱いのです。酸性の飲み物を常時摂取することにより、エナメル質が溶かされ、象牙質が露出することがあります。
これを「酸蝕歯(さんしょくし)」といいます。
毎朝、健康のために野菜ジュースや果汁100%のジュースなどを飲む習慣などが、酸蝕歯につながり、知覚過敏を起こすこともあるのです。
知覚過敏の原因は、自分自身の生活習慣によることが原因ですが、そうではない部分もあるので、注意してください。
例えば、歯周病により歯茎が下がってきた場合には、知覚過敏と同じような症状を起こす場合があります。
また、虫歯の症状によって、知覚過敏と同じような痛みが発生する場合も考えられます。つまり、知覚過敏の症状に見えるからといって、必ずしも知覚過敏とは限らないのです。
知覚過敏の治療と予防
知覚過敏を起こしたら、痛みは一時的なものですが、刺激を受けるたびに痛みを伴うようになります。一度壊されてしまったエナメル質や歯周組織は、自然には治りません。
もし、「知覚過敏かな?」と思ったら、まずは早めに歯科医院に行きましょう!知覚過敏の治療については、一番多いのが以下の治療法です。
フッ化物配合薬を定期的に塗布し、歯の再石灰化を促進。
歯科用セメントなどで物理的に保護。
また最新の治療法として、レーザーを使用した治療を行う歯科医院もあります。これは、露出した象牙質にレーザーを当て、象牙細管へ刺激が伝わらないようにする方法です。
この治療法は早期治癒が期待できますが、残念ながら保険が適用されません。
また、専門の医療機材が必要になりますので、歯科医院によっては行っていない医院もあります。レーザー治療を希望される場合には、事前に歯科医院に問いあわせて下さい。
知覚過敏の予防については、代表的なものは以下になります。
痛みの予防として、知覚過敏用のしみない歯みがき粉を使用して歯磨きを実施。
歯ぎしりが原因の場合、マウスガードを着けて就寝。
歯周病が原因の場合も併せて、正しいブラッシング法の指導を受ける
まとめ
知覚過敏の症状は、一時的な痛みが多いため、治療しない方が多いのですが、果たしてそれで良いのでしょうか?
知覚過敏は虫歯と異なり、継続的な痛みではないため、軽く見られがちです。しかし、知覚過敏を放置すると深刻なケースに陥ることもあることを知っておいて下さい。