Tooth Contacting Habit
2016年11月28日
こんにちは。歯科医師の新井です。
TCHという言葉をご存知でしょうか。
TCHとは、Tooth Contacting Habit の略で、日本語で言えば、上下の歯を接触させる癖のことです。
食事以外で上下の歯を接触させる癖といえば、当診療室でも治療テーマにしている「ブラキシズム」つまり無意識時の、多くは就寝時の「かみしめ癖」や「くいしばり癖」、いわゆる「歯ぎしり癖」が思い浮かびます。
しかし実際には、日中何かに集中したり、緊張した状況で、上下の歯を わずかに軽く「くっ」と接触させる癖が、東京医科歯科大学の歯科顎関節治療部での顎関節治療を受けられる患者さんに多く認められたことより、木野准教授を中心にしたグループでこの「TCH」が提唱されました。
では、リラックスしている時のかみ合わせの正常な状態とは?
リラックスした時の上下の歯は、当たることなく少しすいています。この1~3ミリの隙間を「安静空隙」と呼びます。
上下の歯が軽く触れた状態でも、顎の筋肉は緊張状態にあるという事なんです。
軽く上下の歯を接触させることでも、その歯の歯根表面にある歯根膜という神経の圧迫、血流障害が起こっています。それによる歯の知覚過敏症状、歯周組織の変化、ダメージによる歯のかみ合わせ痛や動揺、浮き症状、やがては歯周病の進行にもつながってゆきます。
また、かみ合わせた状態の持続は、耳の前にある顎関節の圧迫を引き起こし、血流障害・関節痛の原因となります。顎関節症発症の一つの要因です。
次に筋肉について考えてみましょう。軽くかみ合わせた状態でも、収縮した顎の閉口筋(口を閉じる働きの筋肉)は緊張状態にあります。その状態の持続は、首や肩の筋肉の緊張へ波及します。そして疲労、血流障害が、筋肉のコリとなって出現するのです。
次回はTCHを防ぐ方法についてお話しさせていただきます。